『ボーフィ』(アザト・ナーガイ)
レビュアー:ジャラヴ・ナルド
ザヴァール族出身の生物学者、生物写真家。古来より人々の関心を集め続け、研究され続けてきたボフリの「異常な攻撃性」の謎について「(科学的に)決着をつけた」ことで知られる。子ども向けのテレビ番組や本などで「ボフリ狂おじさん」としてコミカルなボフリの着ぐるみを着て子ども達を笑わせるなど、「ボフリ愛好家を最も多く増やした人物」と言われる。主な著作に『異常な攻撃性 ─ やはり“普通”ではなかったボフリ』『ボフリ大図鑑』『ボフリに魅せられ命がけ ─ 世界で一番、死亡率の高い仕事をする研究者』などがある。
まだ読んでいない、あるいは観ていない人は、人生の中でそう多くはない、笑い溺れるほどの笑いを確実に取っておけているのだから羨ましい。
見た目はモフモフコロコロの小さなムーフィが、ボフリの獰猛さで猛って攻撃してくる。ボフッ(リ)!ボフッ(リ)!と頭突きをかましてきたり、あの可愛らしいツメでカリカリカリカリッとひっかきまくってくる、そして飼い主である少女やその家族はそれを愛情表現であると勘違いし、それに対してボーフィが更に荒れくるうシーンは、笑いすぎて息ができない。
更に笑撃は続く。ボーフィの親友(と思い込んでいる少女)を襲った恐るべき猛獣ヴァルードにも、あの小さな身体で口の中に飛び込んでゆき、尾を膨らませて喉を詰まらせ、撃退するシーンの爽快感、そして、感謝のあまり涙を流しながらボーフィを抱きしめる少女や両親にも猛り狂ってモフモフと暴れ、尾を膨らませまくって、これが愛情表現であると思って更に感動する家族たちとのズレが生み出すおかしさと言ったらもう、呼吸器無しで読んではいけないと警告したくなるほどの笑わせ作品である。
実際、本作品をゴノイーエルサーカス団が初の「演劇サーカス」として初講演した時は、笑い過ぎて呼吸困難に陥る人が多発したという、本作にふさわしい伝説的エピソードもあるほどだ。
ティルトレーズ系移民出身で初の映画監督となった偉大な監督アザト・ナーガイのデビュー作であり、ゴノイーエルサーカス団で脚本を書くにいたったその経緯と、その後の成功までの道程は、監督の自伝『サーカス団の映画監督』などに詳しいが、本作とは全く逆の意味で涙なしには読めない。
ボフリとは違った意味で強烈かつ凶猛なる本作、その暴風の如き笑いはあなたの悩みなど豪快に吹き飛ばしてくれるだろう!時間も吹っ飛ばしてくれてしまうので、遅刻してはいけない時には読まないこと!
訳注
ボフリ
大型の水棲生物。肉食性で、ソウコウリディンなどを捕食する。巨大な牙が特徴 。
非常に気性が荒く、古から漁師やダイバーに恐れられており、「気性が激しい」「凶暴」「乱暴」の代名詞的存在となっている一方、自分より大きなものにも臆せず向かってゆく様が「勇気あるもの」として讃えられ、勇敢さや強固な信念の象徴として、武器や紋章などのモチーフとされてきた。
良くも悪くも「(性格や信念などが)変わらない」ということのたとえとして用いられることが多い。

ムーフィ
小型の草食動物。全身がフカフカの毛に覆われていることから、ケダマとも呼ばれる。攻撃性皆無と言っていいほどに、大人しくのんびりとした性質で、古の時代から心和ませる動物であるとして愛されてきた。
捕食動物に捕まって飲み込まれそうになると、尾を瞬時に数倍の大きさに膨らませ、喉に詰まらせてたまらず吐き出させる、というユニーク且つ平和的な防御手段を持っていることから、この生態に関連したことわざや格言が多い。
毛の有用性などについて称えられる一方、(飼育下では特に)ほとんど何も気にしないような振る舞いに見えるため、良くも悪くも物事に無頓着であることの表現としてことわざや民話などで登場することが多い。

ゴノイーエルサーカス団
ヴェリアートの伝説的なサーカス団。
創設者はヴァルーズ・ゴノイーエル。移民家庭に生まれ、映画脚本家を目指すも、貧困や様々な偏見に苦しんでいた時代のアザト・ナーガイを迎え入れ、彼を監督・脚本家としてオリジナルの映画をサーカス団員たちで自主制作し、その物語や設定を主軸としたサーカス「映画サーカス」を披露、それが世界的な評判となり、また各方面からの高い評価も得て、唯一無二のサーカス団として世界的な大成功を収めた。
セレンディール文明誕生時点まで、世界最高峰の大サーカス団であったが、セレンディール法により、動物を使うパフォーマンスのほとんどを禁じられたことに対して従わなかった為、強制的に解散され、その長い歴史に幕を閉じた。セレンディール文明創始の、闇の側面として例に挙げられることが多い。