『「太古から」はタマクルムの音楽?』(レルム・ナイリ)
レビュアー:イルナ・ヤクル
クルム書房店長。クルム書店は、クルム及びクルムに関連した人物などについての本しか扱わず、また、クルムに関する研究書や写真集、作品集などの出版もする、クルム愛好家たちに愛されてきた歴史ある書店及び出版社。
非常に美しい模様で人々を魅了するセンリツタマクルム。ですが、このタマクルムの魅力は模様だけではありません。なんとその名の通り、音楽を披露してくれるのです。
センリツタマクルムの尾は、独特の澄んだ金属音のような、それでいて柔らかさも感じさせるなんとも不思議で美しい音色を奏でる、非常に精巧な「楽器」となっており、夜になると岩や流木などによじのぼり、この「楽器」で岩と水面を交互に叩いて旋律を生み出して雌を呼ぶことから、古代より「奏でるタマクルム」としてよく知られていました。クルム愛好家の間では、親しみを込めて「演奏家」とか「音楽家」などと呼ばれています。
イリル・カイナ族で古代から演奏されてきた、『タマクルムの歌』として、現在では世界中で人々に親しまれているメロディは、センリツタマクルムが「演奏」したものをもとにして作られたとされています。当店でもこの『タマクルムの歌』をBGMにしており、お客様と一緒にうっとり聴きながらクルムについてお話をしたりしています。
実はこの、「タマクルムが奏でる旋律」には、壮大な物語が背景にあるのですよ。
『タマクルムの歌』を聴けばすぐに連想する曲があると思います。「最古の音楽」「宇宙の音楽」「竜の音楽」などと呼ばれる、世界で最も有名な曲『太古から』です。私たちが生きているこのセレンディール文明が誕生した瞬間から、ルグディール族の音楽洞でまったく途切れることなく演奏され続けてきていることでも有名ですね。まったく同じというわけではないですが、あのメロディと非常によく似ています。と言いますか、『太古から』の無限にある変奏のひとつと言い切ってもいいでしょう。当店でも『タマクルムの歌』を初めてお聴きしたお客様から、「あれ?これって『太古から』ですか?」とよくお尋ねされます。
『太古から』は、この『タマクルムの歌』がルグディール族(当時はルグディール帝国)へ伝播して生まれたのではないか、という学説もあり、なかなか証明は出来ないのですが、根強く支持されていています。タマクルム愛好家は皆(もちろん、私も)、この説が真実だったらいいなぁと思っていたり・・・・・・。
センリツタマクルムは「旋律を学習する」ことが確認されています。水族館で飼育されていた個体が、水族館でBGMとして流されていた曲のメロディを奏でた、という報告が寄せられ、実験の結果、それは正しいと証明されたのです。そのため、生息地や研究機関、水族館などでは、音楽の演奏および放送は、研究など特殊な事情があり、厳しい審査の上で許可を得られた場合を除き、禁じられているのですよ。当店のすぐ近くにあるティルトレーズ水族館でも、口笛なども含めて、禁じられています。
そのようなわけで、『タマクルムの歌』が『太古から』の元になったのではなく、逆に『太古から』が『タマクルムの歌』の元になった可能性もあるのですね。何らかの理由で『太古から』を聴く機会のあったセンリツタマクルムがそれを気に入って学習し、広がった可能性もあるということです。
本書では他にも色々な説が紹介されていますが、いずれにせよ、『太古から』と『タマクルムの歌』には何らかの関連がある、という点に関しては、ほぼ確実である、という結論になるそうで、その結論部分を読んだ瞬間に、思わずやったー!と叫んでしまいました。
真実は永遠に明かされないかもしれませんが、現実にセンリツタマクルムが『太古から』の旋律を古代から奏で続けているという事実だけでも、嬉しくなりませんか?
センリツタマクルム

タマクルム
ルドルーズ湖固有種のクルム類。
もともと、丸みのある体型が特徴的なクルム類だが、タマクルムはその丸みがより強く、名の通り球体に近い。
ルドルーズ文明文明をはじめ、ルドルーズ湖、通称「砂海」では、タマクルムは神が愛する生きものとされ、その穏やかで好奇心が強く、友好的な性質から、人類の友として親しまれてきた。
夜になると発光する種が多いことから、古代より宇宙的なイメージを喚起させる存在として認識されてきており、ルドルーズ湖を宇宙、タマクルムを星や隕石などに見立てた表現(「星屑湖」「流星映し」など)が多い。
ほぼ似た球体状の体型に、数万種にも及ぶ、様々な模様や色を持ったタマクルムがいるため、それぞれの種に、模様から連想される事物の象徴(例えば、雷光のような模様を持つイカズチタマクルムは、「雷」「電気」「(人類を雷から守る)守護者」のように)とされ、神話や文学、芸術や工芸、服飾など非常に幅広い分野でモチーフとして用いられ、また「泳宝」「湖中星」「湖泳星」など、古来より多彩な呼び名で親しまれてきた。
