2026-06-04 13:13

『ルーネイ製作の手引き』(ラーナル・サイザ)

レビュアー:レゴール国立ルーネイ博物館 世界最古・最大のルーネイ博物館。ルーネイの聖地として、世界中からルーネイ職人や愛好家が集まる。ルーネイ作品の展示・収蔵数は、質・量共に世界一を誇る。「ヴェリアート国立ルーネイ博物館」「レスターン機械工芸博物館」と並んで「世界三大ルーネイ博物館」と呼ばれる。ルーネイ職人育成機関の最高峰として知られるレゴール国立ルーネイ学院は同敷地内。

セレンディール文明誕生時、ラヴェニールのもとで、セレンディール法の起草に深く関わった人物の一人であり、あのエレルリーズ・レーヴェナーの哲学教師であり、そしてセレンディール文明論で最も重要な概念の一つである「セレンディール・ショック」の提唱者として知られる偉大な哲学者・法学者ラーナル・サイザは、また、偉大なルーネイ職人という顔もあった。しかも、そちらの世界でも数多くの傑作を残しているという、正に天才と呼ぶにふさわしい人物であった。

本書は、そのラーナル・サイザ自らがルーネイ製作の基本を、豊富な写真、イラストを駆使して、独学者でもゼロから学べるように懇切丁寧に解説した、ルーネイ技法書の名著である。

「私はいかなる細部をも絶対に適当な理解で済まさないことをルーネイで学んだ」という前書きの言葉に偽りなし、徹底的に各工程、各部品の役割や構造を解説し尽くしている。

しかも、その解説として使われている教材(実作による写真解説)は、あの名作《エレルリーズ・レーヴェナー》。レゴールの偉大な「女帝」に捧げたルーネイ史に残る傑作である。これほど贅沢な「技法書」は、他のいかなる分野を見てもそうはない。ルーネイ職人を目指すわけでなくとも、愛好家ならば絶対に手元に置くべき本だ。

ルーネイ職人育成機関の最高峰にして最古の教育機関であるレゴール国立ルーネイ学院でも、基本テキストとして使われている。

訳注

ルーネイ

複雑なからくり機構を組み込み、物語などを表現するカード型の機械工芸・美術。

初期は手の平サイズのカード型であったが、非常に幅広く発展を遂げ、現在では、ルーネイの技法を用い、「絵画」としたものや、「壁画」として制作されたもの(世界横断都列車や超高速列車レンディール、竜禍記念博物館、人禍記念博物館などにあるルーネイの壁画が有名)、武器や文房具の「装飾」として組み込まれたもの、アクセサリーや衣装の一部としての利用、など、ほぼ無限と言ってよいくらいに様々な表現、実用品として日々の生活に浸透している。

「非常に複雑であること」「最高度の技術」などの代名詞的な存在であり、これらを表現する言葉によく比喩として用いられる。

ラヴェニール

セレンディール文明創始者。史上唯一の世界統一を成し遂げた。「生来の身分の完全廃止」「世界共通語(セレンディール語)」「世界共通法(セレンディール法)」など、現代世界の礎となる政策を実行した。

セレンディール世界では、「セレンディール文明創始者」を表す「創始者」という単語は、このラヴェニールの尊称のみに用いられており、例えば、学派や企業、組織などの「創始者」とは別の単語となっている。

エレルリーズ・レーヴェナー

レゴールの貴族。今なお、レゴールで最も人気があり、世界でも最も尊敬されている偉人の一人。通称「女帝」。「最後の貴族」とも呼ばれる。

幼少時、家族全員を皆殺しにされ(レーヴェナー家虐殺事件)ながらも、直後に虐殺事件時に自身を救出した特殊部隊長などを側近に引き立て、「レーヴェナー家の正統後継者」として政界に入り、子どもとは思えないほどの手腕を発揮してトップに上り詰める。

その後、「ラディール誕生と、それに乗じた、世界各国の植民地一斉蜂起」「竜禍」「レゴールの敗北(セレンディール文明誕生)」などの、レゴール史上最大最悪ともいえる時代に、最後まで「レゴールの誇り」として毅然とした生き方を貫いたことで、レゴール人のみならず、世界中の人々の敬意を勝ち取った。

「人禍記念博物館」と「竜禍記念博物館」の創設を提案したことは、レゴールに対する史上最大の貢献であると評価されている。

突然、行方不明となり、現在も謎は解明されておらず、様々な陰謀論を生んでいる。最も信憑性があると思われているのは、セレンディール文明創始者ラヴェニールの側近であるレナティスによる暗殺説。

セレンディール・ショック

「竜禍」直後、セレンディール文明の誕生が誕生し、「人類が(知的)最上位の存在である」という根底を覆されたことで、その屈辱、未来への絶望から、現実を受け入れることが出来ず、自殺する者、精神をわずらう者が大量に続出した。これらを総称した言葉で、哲学者ラーナル・サイザの造語(初出:『「竜禍」後の世界』)。

ラーナル・サイザ

レゴールの哲学者、法学者、ルーネイ職人。『自殺研究』、『「竜禍」後の世界』などの名著で知られる。

「竜禍」直後、セレンディール文明の誕生が誕生し、「人類が(知的)最上位の存在である」という根底を覆されたことで、その屈辱、未来への絶望から、現実を受け入れることが出来ず、自殺する者、精神をわずらう者が大量に続出したことなどを総称する言葉「セレンディール・ショック」の提唱者(初出:『「竜禍」後の世界』)として知られる。

「女帝」「最後の貴族」と呼ばれたエレルリーズ・レーヴェナーの哲学教師であったことは有名。

レゴールの伝統機械工芸・美術であるルーネイの熱烈な製作者・愛好家で、自身も傑作を残しており(特にエレルリーズ・レーヴェナー、ラヴェニールへ捧げたモデルは知名度が高い)、著作も多い。レゴール国立ルーネイ博物館等で作品が展示されている。