『陰謀論を愉しむ 信じるは愚人、愉しむは賢人、けなすは凡人』(ディド・エンザ)
レビュアー:『セレンディール図書館長読書日記』。世界最大の図書館であり、あまりにも巨大な為、「図書都市」とも呼ばれるセレンディール図書館の、初代館長から続く伝統である、館長の公開読書日記。「賞」でも何でもなく、館長が好きに読んだ本を気軽に短文で紹介するというスタンスで執筆・公開されてるものであるが、ここで取り上げられた本は世界的に注目され、読者数が激増し、また「極めて価値のある本」であると認識されるようになることから、事実上、最高峰の文学賞などを受賞するに等しい(あるいはそれ以上の)影響力を持つ。
陰謀論を愛するあまり、陰謀論博物館を創設してしまったほどの陰謀論愛好家ディド・エンザが語る、陰謀論の愉しみ方を語る、知的刺激に満ちた熱い本。
「陰謀論を愉しむ」というと何やら怪しげだが、むしろ歴史学者やノンフィクション作家を目指す若者にこそ読んで欲しい本である。知識や論理といった知的技術の正しい使い方というものが、洒脱なユーモアを介して、愉しみながら身に付くだろう。
陰謀論とは、信じるものではない、愉しむためのものなのだ。知的ゲームなのである。
歴史や事件、考古学や心理学、宗教学など、様々な知識をパズルのように組み上げ(創造)し、その陰謀論の説得力レベルを判定し合うものなのだ。もちろん、結果として、「真実」に辿り着いてしまうこともごく稀にはあるが、それはいわば予想外の「ご褒美」であって、そのこと自体を主目的にしてはならない。それならば、陰謀論なんぞではなく、学問として追究するべきであろう。
本書では、理想論だけを述べるのではなく、自らが「ルージス・グレティール『竜禍読書日記』真実説」や「『リューズレイ人形師』レルーリ・ユーレンの不審死」などを題材として取り上げ、様々な公的資料を組み合わせ、「陰謀論新説」を作り上げるプロセスを、鮮やかに見せつける。読んでいてほれぼれするほどの論理構成だ。
ディド・エンザ曰く、「粗雑な陰謀論ほど、人をウンザリさせ、それを言った人間の知性を疑わせるものはない」。
訳注
ディド・エンザ
ヴェリアートの陰謀論研究者、心理学者。「陰謀論博物館」の創設者、初代館長。陰謀論研究の大家として知られ、多くの関連著作がある。
主な著作に『陰謀論誕生プロセス』『陰謀論を愉しむ』『陰謀論超えの事件』『ルージス・グレティール失踪の謎を分析する』『ルーレク・レナリー遺跡行方不明事件 現状分析』などがあり、『陰謀論誕生プロセス』でヴェリアート学術研究賞、『陰謀論超えの事件』でヴィーレ・クレグディール賞を受賞。
陰謀論の熱狂的な愛好者であることを誇りを持って自認しているが、陰謀論のほとんどは信じていないと公言している。陰謀論そのものではなく、陰謀論が生まれるような事件そのものや、陰謀論が生まれるプロセス、陰謀論を本気で信じる人々の心理状態やその背景(家庭環境、教育、地元の文化など)に関心がある。
陰謀論博物館
いわゆる「陰謀論」をテーマとしたユニークな私設博物館。
『陰謀論誕生プロセス』『決定版 陰謀論事典』などの著作でも知られる陰謀論の大家ディド・エンザが創設した。
展示は、「陰謀論」をテーマごとに取り上げ、その陰謀論と有力な仮説(陰謀論)を紹介・解説し、陰謀論の「根拠」とされている資料または複製品を展示している。
また、陰謀論がどのようにして生まれるのかを、創設者ディド・エンザ自身が「ゼロから創り出すプロセス」を見せ、わかりやすく解説した映像作品も充実している。
小さな博物館だが、陰謀論愛好家たちが集まり、日々、白熱した議論を交わしている。