『グムーヴの描き方』(パディル・ウーズリー)
レビュアー:ジルパ・ミーリム
パディアの写真家。森をテーマとした写真を撮り続けたことで知られる。デビュー作『森林洞窟』がベストセラーとなった。『森を闊歩する森 ─ パディアモリグムーヴ写真集』で、ラヴェニール生物写真賞を受賞。主な著者に『地下の森』『列車内森林』などがある。
本書は、ある目的に関しての、世界唯一の技法書である。
「この世で最も醜悪な生物」
「史上、最も多くの人間に悲鳴をあげさせた生物」
「モンスター映画のモンスターデザイナーは、デザインなどする必要はない。グムーヴを巨大化すればそれが最も恐ろしく嫌悪感を催させるものになる」
「神様が人間に、“醜い”という概念を理解させるために見本として用意した生物」
「不快さを詰め込んで造るとこうなるという見本」
「人類を罰するために神が放った生物」
「醜臭棘刺」(古称)
などと言われる「あの」グムーヴの描き方を懇切丁寧に、解説し切った怪著・・・・・・いや、名著である。少なくとも、現時点では、グムーヴの描き方に特化した書物は、本書のみである。
あまり需要はないのでは・・・・・・と思ってしまうが、世界唯一のグムーヴ博物館として知られるパディア国立グムーヴ博物館や、ラヴェニール生物美術館のミュージアムショップなどで、現在も原書パディア語版とセレンディール語版がひっそりと、しかし超ロングセラーとして売られ続けている。
そんな本書の著者パディル・ウーズリーは、最高のグムーヴ研究者にしてグムーヴ・アーティストとして、グムーヴ愛好家の間では最も尊敬されている偉人の一人である。あのラクール・ルーネリーや、ラヴェニール・カード社の創業者ルーティス・ナルリードの親友でもあったということのほうが、小説や旋律画、映画などでよく知られているかもしれない。
生物カードの「グムーヴ」の栄えあるナンバリング「1番」は、彼の作品であり、グムーヴは苦手でも、彼のグムーヴ画の美術作品としての価値を疑う者はいないであろう。そんな彼が、精魂込めて描いたグムーヴ描法の精髄たる本書は、グムーヴ文化史に燦然と輝く大著であると断言する。
グムーヴ愛好家を自称している人で本書を所有していない人が或るとすれば、まさしく「自称」以外の何ものでもない。
グムーヴ
「この世で最も醜悪な生物」「不快さを詰め込んで造るとこうなるという見本」「人類を罰するために神が放った生物」などと言われるほどに、人間にとっては気持ちの悪い外見に、悪臭や毒棘などを併せ持つ大型の虫。
身にも毒があるため、食用にも出来ず、農作物も荒らすため、とにかく、厄介な生物として忌避されてきた。
一般的に、「醜さ」「厄介者」の代名詞のような存在として認識されている。
「醜刺「醜臭棘刺」」「無良」など、多くの呼び名がある。

生物カード
世界最古の歴史を持ち、世界最多の発行枚数とコレクター人数を誇る、「最も美しいカード」と称賛されるコレクション用カード。名前の通り、カードの表側には一流の生物画家による美麗な生物画が描かれており、裏面は紫地に、銀の繊細なセレンディール語のフォントで、表に描かれている生物の学名と画家の名、カード番号(カード全体の番号ではなく、固有種ごとの番号と、画家ごとの作品番号)が絶妙な配置で刻印されている。考案したのは、社名の由来でもあるセレンディール文明創始者ラヴェニール。創業者はルーティス・ナルリード。
ラヴェニール・カード社の方針により、全体のカード種数は公表されていないが(“未知”という楽しみを殺ぐことを防ぐ目的としている)、推定では何と1000万を超えるとされる。日々増えていることも相まって、正確な種数を出すことは事実上、不可能と言ってよい。