『本のぬいぐるみ「ぬいぐるぼん」作品集』(マブーリ夫妻)
レビュアー:メゼル・イーディン『本を読めば暇じゃないよね』
ルクトレスの文学者、カイズ・セタリ研究者、エリル・イーレア文学院教授。主に文学が政治や経済、他の芸術に与える影響についての研究が専門。
『カイズ・セタリとレゴール — “微笑み”が超大国で憎悪されたのは何故か』でルウェイン学術賞、『物語の生贄』でセレンディール図書館賞を受賞。
世界横断都列車で無料配布されている雑誌『暇つぶし』で連載しているブックレビュー『本を読めば暇じゃないよね』が、ユーモアのある文体で大人気。単行本はベストセラーとなっている。
主な著作に『カイズ・セタリとレゴール — “微笑み”が超大国で憎悪されたのは何故か』『物語の生贄』『ベストセラー分析 ─ 億を超える人に読ませる力の源はどこにあるのか』『本を読めば暇じゃないよね』などがある。
「ぬいぐるみの本」ではない。「本のぬいぐるみ」である。「ぬいぐるみ王」マブーリ夫妻は、「本」をも「ぬいぐるみ」にしてしまったのだ。もちろん、本当に読める。「本を模したぬいぐるみ」ではない。ちゃんと、「本」なのである。いやはや、とても私などには考えもつかない。
それも、実際に作品を見てもらえば(出来れば本物に触れて頂きたい)おわかり頂けるだろうが、発想だけのキワモノなどではないから恐れ入る。字も挿絵も、全く読むのに邪魔にならない。
それどころか、持っていて実に心地よい。フニャフニャ過ぎて持ちにくいんじゃないかと心配する向きもあるだろうが、「ぬいぐるみ王」がそんないい加減なぬいぐるみ作りなどするわけがなかろう。
このためだけに莫大な費用と時間をかけて開発したという、複数の木の繊維とレルン毛とムーフィ毛などを配合して作った素材と、ぬいぐるぼん専用製本技術(例えば、芯の部分に樹脂を含ませた固めの糸を使用して織った素材を用いるなど)を用いた表紙、裏表紙にも本紙部分も、実に絶妙なコシがあって、それでいて、もふっとしていて、とにかく、不思議な心地よさがある。
しかも洗えるのだ、これが。洗える本。マブーリ夫妻が生まれる前に、洗える本をつくろうなどと発想した者が、人類史上、一人でもいただろうか!?
というわけで、幼い子にも、あらゆる点で安心の本・・・・・いや、ぬいぐるみ・・・・・・やはり、「ぬいぐるぼん」としか言いようがない。とにかく、ぬいぐるぼん最高!ということですよ。
私にも幼い娘がいるが、ぬいぐるぼんがお気に入りで、読んでいるうちに眠くなると、まるでレムンを抱きしめるように優しく抱いて寝る。これを見ていると、本当に幸せな気持ちになるのだ。
実は私自身も、幼い頃に、ぬいぐるぼんに親しんでおり(今もか)、娘のぬいぐるぼんのうちの半数は両親が私の為に買い、読んでくれたものだ。今の私が娘に感じるような気持ちでいたのかなと思うと、何だか不思議で、そして暖かい気分になる。
私が今、それなりにたくさんの本を読み、本を書いたり、紹介したりできているのも、ぬいぐるぼんで読書との最高の出会いをしたからなのだ。
本書の解説ではなく、ぬいぐるぼん自体の解説になってしまった。本書は、そのぬいぐるぼんの作品集である。なお、ぬいぐるぼんについての開発秘話や素材の秘密などにご興味を抱かれた方には、マブーリ夫妻による『ぬいぐるぼん開発秘話』、マブーリぬいぐるみ美術館が出版している『ぬいぐるぼん制作の現場を訪問!』『ぬいぐるぼんづくりのひみつ』などがお薦めである。